この記事でわかること
- プッシングとは何か、テイクオフの3段階における役割
- プッシングがないとなぜ横に走れないのか(物理の理由)
- 手の位置・アゴの向き・親指の向きの正しいやり方
- 自宅でできる練習方法と、プロ(ロブ・マチャド)の参考映像
プッシングとは、テイクオフの第2段階「上体を起こしながらアゴを進行方向に向ける動作」のことです。
テイクオフがうまくいかない初中級者の多くは、波キャッチ後すぐにポップアップしようとしています。プッシングを挟まないと、レールがフラットなまま板が降りてしまい、まっすぐ下にしか行けません。フロントサイドでもバックサイドでもターンに入れず、「テイクオフしたのに横に走れない」という状態がずっと続きます。私もサーフィンを始めてから19年間、プッシングなしでテイクオフしていました。この記事では、テイクオフのプッシングを知ってからサーフィンが変わった体験と、具体的なやり方を解説します。
目次
プッシングはテイクオフのどの段階にあるか?
テイクオフは3つの段階から成り立っています。
①波キャッチ → ②プッシング → ③ポップアップ、この順番です。目的は「ターンの準備」。立ち上がることがゴールではなく、ターンに入れる姿勢を作ることがゴールです。
それぞれの段階を整理すると、①波キャッチは「波の力を受け取る」、②プッシングは「レールを入れる」、③ポップアップは「ターンの姿勢を作る」です。この3つが揃って初めて、テイクオフ後にすぐターンに入れます。
プッシングを飛ばして波キャッチからポップアップに直行すると、レールが入らないままボードが波に乗ります。レールがフラットな状態では、板は波に対してまっすぐ降りるしかありません。フロントサイドもバックサイドも、テイクオフ後に横へ走れない原因のほとんどはここにあります。
英語圏の解説でも、テイクオフをpaddling / push-up / popの3段階に分ける表記が見られます(Boardridersの「Surf Take-Off Guide」など)。呼び方は違っても、「波をつかまえる段階」と「上体を起こす段階」と「立つ段階」を分けている点は共通しています。日本では「波キャッチとポップアップ」だけで説明されることが多く、プッシングが抜けたまま指導されているケースがよくあります。
テイクオフの全体像をより詳しく知りたい方は、「サーフィン テイクオフのコツ|20年の実践者が教える「波に乗る」3原則」もあわせて読んでみてください。
プッシングを行うとどんな変化があるか?
プッシングを身につけると、テイクオフ後の動きが大きく変わります。
プッシングができたときのメリット
- テイクオフで慌てなくなる
- テール側に重心が残る
- サーフボードが波のパワーを拾う
- テイクオフ前にレールが入る
- バックサイドでも横に走れるようになる
- 前乗りに気付けるようになる
- 視野が広くなる
プッシングなしのデメリット
- テイクオフで慌てて立ち上がる
- ノーズ側に重心が残る
- パーリングしやすい
- ボードが波のパワーを拾わない
- まっすぐ下に降りてしまう
- 下ばかりを見てしまう
- 視野が狭い
- 前乗りに気づかない
「視野が広くなる」という効果は、最初は信じにくいかもしれません。しかしアゴを下げて板を見ながらポップアップすると、物理的に視野が狭くなります。前乗りに気づけないのも、下を見ているから。プッシングでアゴを進行方向に向けると、波の状況・他のサーファーの位置・どこに向かうかを確認しながらテイクオフできます。
「テイクオフは安定しているのにライディングがすぐ終わる」という方は、レールが入っていない可能性が高いです。プッシングをしていないと、ボードが波のパワーゾーンに乗り切る前に失速します。バックサイドで横に走れない、という悩みを持っている方にとっても、プッシングは最初に取り組むべき改善点です。
プッシングのやり方|手・アゴ・親指の3点
プッシングには3つの重要な確認ポイントがあります。
1. 手は胸の横に置く
手がノーズ側(前)にあると、上体を起こしにくくなります。前に手をついてしまうと、腕で体を押し上げる力が使えず、足も前に出にくくなります。手はあばら骨の横、胸と同じ高さを意識してください。実際に陸で試すと、手の位置が少し前にあるだけでポップアップの動きがぎこちなくなることがわかります。
2. 親指は内側に向ける
親指を外側(ノーズ方向)に向けると、肩の動きが窮屈になります。その状態では上体を起こしにくく、ポップアップしても足が出にくい。親指を内側(お互いが向き合う方向)にすることで、肩が自然な位置に収まり、プッシングの動きが楽になります。レールも掴まないことが大切です。レールを掴むと上体の動きが固定されてしまいます。
3. アゴを進行方向に向ける(最重要)
プッシングで最も大切なのはこれです。アゴを進行方向に向けると、体重のかかり方が傾き、レールが入ります。板がフラットなままでは水の抵抗で横に走れませんが、レールが入ると板が波の斜面に噛み、横方向への推進力が生まれます。下を向いていると視野が狭くなるだけでなく、レールが入らず板がフラットなままになります。
この3点はCorrect Surfで習い、韓国のウェーブパーク合宿で実際に確認したことです。理屈でわかっていても、水中では無意識に下を見てしまいます。私も今でもコーチに何度も指摘されています。それくらい「アゴを向ける」は習慣化が難しいポイントです。帽子をかぶると下を向きやすくなるので、練習中は帽子なしの方が確認しやすいと感じています。
波キャッチからプッシングへの流れについては、「サーフィン 波キャッチのコツ|速く漕いでも乗れない本当の理由」で詳しく解説しています。
プッシングの練習はどうやるか?
プッシングの練習は陸上でできます。
膝をついてうつぶせの状態から、手を胸の横・親指を内側にセットし、アゴを正面(進みたい方向)に向けながら上体を起こします。腕立て伏せとは違い、腕で体を持ち上げるのではなく、背筋を使って胸を反らせるイメージです。
このとき、アゴを向けた側に体重がかかっていることを確認してください。フロントサイドならトゥサイド、バックサイドならヒールサイドに傾くはずです。この体重移動が、レールが入るメカニズムです。
1回の練習時間は短くて構いません。ただし「正しい動作を反復する」ことが大切なので、1日10回でも毎日続ける方が、週末に50回まとめてやるよりも効果があります。海に入る日の朝、起きてすぐビーチに着く前にやる、という習慣が一番定着しやすいと私は感じています。
陸上でのテイクオフ練習全体の流れについては、「サーフィン ポップアップ 練習|海に入る前に陸トレで完成させる3つのチェックポイント」も参考にしてください。ポップアップと組み合わせて練習すると、一連の動きが整います。
19年間間違っていたテイクオフ動画
プッシングの動画を撮りました。タイトルは「テイクオフのプッシングやってますか?19年間間違っていたテイクオフ」です。
この動画を撮った背景を話すと、私はサーフィンを始めてから約19年間、プッシングを意識したことがありませんでした。テイクオフは「波をつかまえて立ち上がる」だと思っていたからです。テイクオフ後にまっすぐしか走れない、バックサイドで横に出られない、という状況が続いていましたが、その原因がプッシングの欠如にあることに気づいていませんでした。
Correct Surfでテイクオフを3段階に分けて習い直したとき、「プッシングでアゴを向けるだけでレールが入る」という感覚を初めて体感しました。頭でわかっていても、身体がついてこない。特にバックサイドでは視線がどうしても下に向くので、今も意識しないとすぐ元に戻ります。19年かかった理由はそこにあります。「知らなかった」より「知っていたけどできていなかった」状態の方が長かったです。
ロブ・マチャドのプッシング時間が長い理由
プロサーファーのプッシング時間は、一般サーファーより明らかに長いです。
ロブ・マチャドの映像を見ると、波面を滑り降りながらプッシングの姿勢を長く保っています。サーフランチのような速くて掘れる波でも、慌てて立ち上がらずにレールを入れた状態を維持しています。
プッシングの時間を長く保てるようになると、視野が広がります。波の形を確認しながら、どこにターンを仕掛けるかを考える時間ができます。一般サーファーが「テイクオフで精一杯」になってしまうのは、プッシングが短すぎてレールが入り切らないまま立ってしまうからです。立ったあとは波の状況を確認する余裕がなく、とりあえずボトムに降りてフィニッシュ、というパターンになりやすい。
プッシングを長くするために必要なのは「慌てないこと」ではなく、「アゴを向けてレールが入っている状態に慣れること」です。レールが入っていれば板が安定するので、ポップアップを急ぐ必要がなくなります。逆に言うと、プッシングが短い人はレールが入っていないので、不安定な状態でポップアップを急ぎます。焦りの原因は性格ではなく、動作の順番にあります。
テイクオフからアップスダウンへの流れを体で覚えたい方は、「サーフィン アップスダウン をサーフスケートで練習する方法」も参考にしてください。サーフスケートでプッシングからポップアップへの一連の動きを陸上で反復できます。
よくある質問
Q. プッシングとポップアップは何が違うのですか?
プッシングはテイクオフの第2段階で「上体を起こし、アゴを進行方向に向けてレールを入れる動作」です。ポップアップは第3段階で「後ろ足・前足を着いてターンの姿勢を作る動作」です。多くの人がプッシングを省いてポップアップだけでテイクオフしており、それがレールが入らない直接の原因になっています。
Q. アゴを進行方向に向けるとはどういう意味ですか?
走りたい方向にアゴを向けることです。フロントサイドなら波の方向・トゥサイド、バックサイドならヒールサイド方向です。アゴを向けると首と肩が連動し、体重のかかり方が自然に傾きます。その傾きがレールを入れます。「意識してレールを入れようとする」のではなく、「アゴを向けるとレールが入る」という理解の方が実践しやすいです。
Q. 手の位置はどこが正しいですか?
胸の横(あばら骨の横あたり)が基本です。ノーズ側(前方)に手がいくと上体を起こしにくくなり、足も前に出にくくなります。親指は内側に向けてください。外側に向けると肩の動きが窮屈になり、プッシングがやりにくくなります。レールは掴みません。
Q. バックサイドのテイクオフでプッシングが特に難しいのはなぜですか?
バックサイドでは、進行方向が視線の反対側になるため、自然に下を向きやすいからです。フロントサイドは波の方向を見ながら進むので視線が合いやすいですが、バックサイドはアゴを後ろに向ける必要があり、体の構造上、下を見てしまいやすいです。意識的に練習しないと、バックサイドのテイクオフではほぼ全員が下を向きます。陸での反復練習で方向感覚を身体に覚えさせることが近道です。
Q. プッシングは初心者でもできますか?
できます。むしろ最初から正しく覚えた方が、後で直す手間がありません。波キャッチがまだ不安定な段階でも、陸上での練習はすぐ始められます。「波キャッチ → プッシング → ポップアップ」の3段階を順番に意識することで、テイクオフの全体像が整理されます。波キャッチの練習と並行して取り組むのがおすすめです。
Q. プッシングのときレールは入れようと意識するべきですか?
意識しなくて大丈夫です。アゴを進行方向に向けると、体重のかかり方が傾き、自然にレールが入ります。「レールを入れる」という意識で体を無理に傾けようとすると、バランスを崩すことがあります。「アゴを向ける」だけを意識してください。それだけでレールは入ります。
Q. プッシングをしているかどうかは自分でどう確認しますか?
テイクオフ後に横に走れているかどうかが一番わかりやすい確認方法です。まっすぐ下に降りてしまうならレールが入っていないので、プッシングが機能していない可能性が高いです。また、誰かに動画を撮ってもらい、テイクオフ時にアゴが下を向いていないかを確認するのが確実です。
まとめ
プッシングとは、テイクオフの第2段階「上体を起こしながらアゴを進行方向に向けてレールを入れる動作」です。
テイクオフを「波キャッチ → ポップアップ」の2段階でとらえていると、プッシングが抜けます。レールが入らないまま立ち上がるので、フロントもバックサイドも横に走れません。私が19年間できていなかったのも、この段階を知らなかったからです。
実践のポイントは3つ。手を胸の横に置く・親指を内側に向ける・アゴを進行方向に向ける。これを陸上で毎日反復することが最短ルートです。
テイクオフ全体の仕組みを整理したい方は「サーフィン テイクオフのコツ|20年の実践者が教える「波に乗る」3原則」へ、パドリングから見直したい方は「サーフィン パドリングのコツ|20年で分かった「疲れない漕ぎ方」の原理」へどうぞ。
サーフギア選びの全体像を知りたい方は「サーフギア完全ガイド|道具選びの全知識を体重・レベル別に解説」もあわせてご覧ください。
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この記事のつくり方
体験にもとづく記述は、筆者のヒガシーサーが実際に経験したことだけです。構成の整理・下書き・校正・ファクトチェックにはAIを使っています。内容の責任は筆者にあります。(最終更新:2026-09-25)
