最終更新: 2026年04月02日
サーフィンのパドリングとは、ボードの上に腹ばいになり、両腕で交互に水を掻いて推進力を得る動作のことです。
パドリングで「すぐ疲れる」「なかなか前に進まない」「肩や肘が痛くなる」。
そう感じているサーファーは、じつはフォームの根本が間違っている可能性があります。
私はサーフィン歴20年以上ですが、そのうち19年間は「競技選手向けのパドリング」を疑わずに続けていました。
結果として肩の亜脱臼を2回経験し、肘の慢性的な炎症に長年悩まされました。
転機になったのはオーストラリア発の科学的メソッド「コレクトサーフ」との出会いです。
「小指から入水して、肘で引く」というシンプルな変化で、亜脱臼も肘の痛みもほぼなくなりました。
この記事では、その原理と具体的な手順を解説します。

目次
なぜパドリングで疲れるのか?原因を正確に特定する
疲れる・進まない原因は「頑張りが足りない」ではありません。
フォームが体の仕組みに合っていないことが根本です。
一般サーファー32,000人の悩みトップ3
私のインスタグラム(フォロワー3.2万人)でアンケートを取ったところ、一般サーファーの悩みトップ3は以下でした。
- すぐ疲れる
- 前に進まない
- 肩・肘の痛み
これらは「体力不足」ではなく、ほぼすべて「フォームの問題」として解決できます。
競技サーファーのフォームをそのまま真似することの危険性
日本で広まっているパドリング指導の多くは、ワールドサーキット(WCT)選手をモデルにしています。
10代から鍛えた身体能力・毎日数時間の練習・ハイパフォーマンスボードを前提とした動きです。
週1〜2回・30〜50代・ファンボードやミッドレングスを使う一般サーファーが同じフォームを目指すのは、根本的にズレています。
| 比較項目 | 競技サーファー | 週末サーファー(35〜50代) |
|---|---|---|
| 練習頻度 | 毎日数時間 | 週1〜2回 |
| 身体の状態 | 10代から構築した筋骨格 | 回復力・柔軟性が低下 |
| 使うボード | ハイパフォーマンスボード | ファンボード・ミッドレングス |
| 目的 | 試合に勝つ速さ | 怪我なく楽しく乗り続ける |
同じフォームを目指すこと自体が間違いなのです。
科学的に見た「疲れる原因」
ファーリーら(2012)の研究では、サーフィンの競技中においてパドリングが総活動時間の約50%を占め、最大心拍数の約75%に達する高強度運動であることが明らかにされています。
これはフォームが正しくなければ、短時間で消耗する構造を意味します。
またメンデス・ビジャヌエバとビショップ(2005)は、パドリングの推進効率はストローク回数より「1ストロークあたりの推進距離」が決め手であると報告しています。
つまり「速く腕を回す」より「1回の漕ぎで遠くへ進む」フォームが正解です。
パドリングの原理:体の仕組みとボードの力をどう使うか
疲れないパドリングには3つの力の源があります。
- 体の仕組み(骨格・背中の大きな筋肉)
- ボードの浮力・抵抗の少なさ
- 海のエネルギー(うねり・流れ)
腕の力だけに頼るのはこのうち1つしか使っていない状態です。
クロールとパドリングはそもそも別の動き
「水泳が得意だからパドリングも上手いはず」は誤解です。
クロールは背骨を軸に体を左右に回転させながら泳ぐ「回転運動」です。
パドリングはボードの上で軸を固定したまま漕ぐ「平衡運動」で、求められる体の使い方が根本的に異なります。
| 比較項目 | クロール | パドリング |
|---|---|---|
| 体の動き | 体を左右に回転させる | 軸を固定して漕ぐ |
| 入水の向き | 親指から入れる | 小指から入れる |
| 軸の取り方 | 背骨を中心に回転 | ボードの中心で静止 |
背中の大きな筋肉を使うと疲れない理由
腕の力でパドリングすると、上腕の小さな筋肉に乳酸が蓄積して疲れます。
試しにスプレーボトルを数回プッシュしてみてください。すぐ腕が重くなるはずです。あれと同じ状態です。
一方、薬指・小指を意識した漕ぎは骨格と背中の大きな筋肉(広背筋・僧帽筋)を使います。
大きな筋肉は疲れにくく、長時間のパドリングを支えられます。
セコムら(2015)の研究でも、パドリング能力と最も強く相関するのは「肩関節の可動域」と「体幹の安定性」であることが示されています(相関係数r=0.61〜0.74)。
腕の力ではなく、体幹と肩まわりの適切な使い方が推進力を生む根拠がここにあります。

疲れないパドリングの具体的なやり方:4つのポイント
コレクトサーフのメソッドと私自身の実践から、週末サーファーが明日の海で使える4つのポイントを解説します。
ポイント1:小指から入水する(親指からは入れない)
日本のハウツー動画でよく見られる「親指から水に入れる」は、競技選手向けの指導です。
一般サーファーが実践すると、肩関節を内旋(内側にねじる)させることになり、腱板や棘上筋に負担がかかります。
小指から入水することで、肩が自然な外旋位に保たれ、関節への集中負荷を避けられます。
| 入水方法 | 肩関節への影響 |
|---|---|
| 親指から入水 | 肩の内旋を強制 → 腱板・棘上筋に負荷 |
| 小指から入水 | 自然な外旋位 → 負荷が全体に分散 |
私がコレクトサーフを学んでからこの方法に変えた結果、それまで10年以上続いた肩の亜脱臼がほぼなくなりました。
ポイント2:肘で引く(腕全体で漕がない)
水を後ろに流す動作は、肘を支点にして前腕で行います。
腕全体をぐるっと回そうとすると、肩の過度な回旋・外転が起きて肘にもテンションがかかります。
「肘で引く」イメージで動かすと、肩への集中負荷を自然に回避できます。
私は以前、肘の炎症を繰り返していましたが、この意識を変えてから痛みが出なくなりました。
「痛くなったら休む」ではなく、「痛くならないフォームを作る」が正しいアプローチです。
ポイント3:アゴをボードから離す
アゴをボードに近づけた姿勢でパドリングすると、肩が詰まって可動域が狭くなります。
その状態で腕を首より後ろまで回そうとすると、肩関節に異常な負荷がかかります。
私が10年以上にわたって肩の亜脱臼に悩んだ根本原因のひとつがこれでした。
アゴを上げることで肩が自然に開き、胸も広がります。
ただし無理に反らすのではなく、次に説明する姿勢の取り方を使って自然に上げることが大切です。
ポイント4:足を閉じてお尻を締める(脱力との両立)
足を開いてお尻を緩めた状態では、体幹が安定せず、肩も詰まりやすくなります。
足を閉じてお尻を締めると、体の仕組みとして胸が自然に開き、アゴも上がります。
これはカラダの連動性(バイオメカニクス)を使った方法で、力まずに姿勢を作れます。
「脱力しながら軸を作る」というのは矛盾しているように聞こえますが、体の仕組みを使うとこれが両立できます。
40代以降のサーファーがとくに意識すべきことは何か
20代と40代では、同じフォームを目指しても同じ結果になりません。
回復力・柔軟性・関節の耐久性が変化しているからです。
40代以降に起きやすいパドリング由来の慢性障害
- 腱板損傷(肩のインナーマッスルの断裂・損傷)
- 肘の腱炎(上腕骨外側上顆炎など)
- 頸椎への負担(アゴを下げた姿勢の継続による)
これらは「無理して続けた結果」起きますが、フォームを変えることで防げます。
「頑張るパドリング」より「関節を守るパドリング」を優先する
サーフィン・オーストラリアのコーチング基準では、パドリング効率を高めるには正しいボード上のポジションと適切な入水角度の組み合わせが不可欠とされています。
競技の世界では「ハイエルボー」(肘を高く保つ技術)が推奨されますが、これは肩峰下インピンジメントのリスクを上げる可能性があります。
40代以降の週末サーファーが同じことをする必要はありません。
私自身、コレクトサーフを学んでからの方針はシンプルです。
「10年後も海に入れる体を今から作ること」——これが40代以降のパドリングの目的です。
肩甲骨まわりと体幹の強化が直接パドリングに効く
セコムら(2015)は、パドリング能力と最も強く相関するのが「肩関節の可動域」と「体幹安定性」であることを実証しています。
海に入る前日の5分でできる確認ポイントは3つです。
- 肩甲骨を寄せる動きがスムーズにできるか
- うつ伏せでアゴを上げたとき胸が自然に開くか
- お尻を締めた状態で体幹が安定するか
この3つが滑らかにできる状態で海に入ると、パドリングの質が明らかに変わります。
よくある失敗パターンとその対処
失敗1:「S字を描くように漕ぐ」を実践している
手のひらを開いてS字に動かすというアドバイスを見かけますが、私が19年間実践してきた結果、これは一般サーファーには合わないと断言できます。
S字動作は水の抵抗を分散させてしまい、1ストロークあたりの推進距離が落ちます。
メンデス・ビジャヌエバとビショップ(2005)が示した通り、効率的なパドリングは「ストローク頻度」より「1回の推進距離」で決まります。
失敗2:回転数を上げようとして焦る
波が来たとき、焦って腕を速く回す人が多いです。
しかし速く回すほどフォームが崩れ、1ストロークあたりの推進力が落ちる悪循環になります。
正しいアプローチは「腕を深く入れて、肘で引く」動作を崩さないまま、波の速度に合わせることです。
力で追うのではなく、波のエネルギーに乗るイメージです。
失敗3:脱臼・痛みが出ても「慣れれば治る」と続ける
私は10年以上この誤りを続けました。
肩の亜脱臼が起きるのはフォームの問題です。慣れで解決するものではありません。
痛みが出たらフォームを見直すサインと受け取ってください。
コレクトサーフのメソッドに変えてから、私は一度も亜脱臼を経験していません。
こんな人には合わないかもしれない
この記事で紹介するパドリングは、週末サーファー・怪我なく長く楽しみたいサーファー向けです。
以下に当てはまる方には向いていない部分があります。
- 競技大会への出場を目指していて、最大速度を優先したい方
- 毎日2〜3時間以上練習できる環境にある若手サーファー
- 専属コーチがついていて、個別指導を受けている方
競技を目指すなら、競技向けのコーチングを受けてください。
この記事は「趣味として10年後も海に入り続けたい」サーファーに向けた内容です。
パドリングに関するよくある質問
Q. パドリングが前に進まない一番の原因は何ですか?
最も多い原因は「1ストロークあたりの推進距離が短いこと」です。腕を速く回しても、水をしっかり掴んでいなければ前に進みません。小指から入水して肘で引く動作を意識すると、1回の漕ぎで進む距離が伸びます。
Q. パドリングで肩が痛くなるのはなぜですか?
肩関節を内旋させた状態で力を加えることが主な原因です。親指から入水する・アゴを下げた姿勢で漕ぐ・腕全体で回す、これらが組み合わさると肩への集中負荷が生まれます。小指入水・肘で引く・アゴを上げるの3点を変えると、多くのケースで改善します。
Q. パドリングの練習は水泳で代替できますか?
クロールとパドリングは体の動き方が根本的に異なるため、水泳で全てを代替することはできません。クロールは回転運動、パドリングはボード上での平衡運動です。水泳は有酸素能力の向上には役立ちますが、パドリングフォームの習得は海での実践が必要です。
Q. 40代からでもパドリングは改善できますか?
改善できます。私自身が20年以上の習慣を変えた経験がその証拠です。ただし「競技選手のような速さを目指す」のではなく、「怪我なく長く楽しめる関節に優しいフォームを作る」という目的の設定が重要です。体幹安定性と肩関節の可動域を整えることが、40代以降のパドリング改善の土台になります。
Q. 波を待つときのパドリングと、波に乗るときのパドリングは違いますか?
基本のフォームは同じです。ただし波をキャッチする瞬間は短距離・タイミング重視になります。大切なのは「力で追う」のではなく「波の速度に合わせる」こと。フォームを崩さずに漕ぐ回数を少し増やすイメージで対応してください。
Q. コレクトサーフのメソッドはどこで学べますか?
オーストラリア発の科学的サーフィンメソッドを日本語で学べる場として、コレクトサーフの公式ページを参照してください。私はクーポンコード「higashisa01」を持っています。
コレクトサーフの公式ページを見る(クーポンコード:higashisa01)
まとめ:明日の海でそのまま使えるチェックリスト
疲れないパドリングは「頑張らない」ことから始まります。
体の仕組みを使い、関節を守るフォームを作ることが、週末サーファーが10年後も海に入り続けるための土台です。
海に入る前に以下の4点を確認してください。
- 小指から入水できているか
- 肘を支点に前腕で引く動きになっているか
- アゴがボードから離れているか
- 足を閉じてお尻を軽く締めた姿勢を保てているか
この4点だけを意識して海に入ると、パドリングの感覚が変わるはずです。
