パドリングで肩や肘が痛くなるなら、フォームに根本的な問題がある可能性が高い。日本で広まっているパドリング指導の多くは10代〜20代の競技サーファー向けに設計されたもので、40代・週末サーファーがそのまま実践すると慢性障害につながるリスクがある。
サーフィンのパドリングとは、波をキャッチするためにサーフボードを漕いで加速させる動作のことだ。テイクオフの成否はパドリングの質で8割決まると言っても過言ではない。
私はサーフィン歴20年以上で、nanazeroとBeach Accessのテストライダーを務めている。コレクトサーフ(オーストラリア発の科学的サーフィンメソッド)を学ぶ前は、肩の亜脱臼と肘の慢性炎症に長年悩まされていた。フォームを根本から変えたことで、両方の症状がほぼゼロになった。この記事では、身体的負担を最小化しながら波をキャッチできるパドリングフォームの4原則をまとめる。
目次
なぜ「力で漕ぐ」は間違いか
パドリングの力関係を整理すると、なぜ力みが逆効果なのかが分かる。
| 力の種類 | 大きさの比較 |
|---|---|
| 波の力 | 最大(何トンもの水の運動エネルギー) |
| サーフボードの浮力 | 中 |
| パドリングの力 | 最小(これだけで波をキャッチしようとするのは無理がある) |
筋力的に劣る子どもや女性でも、ボードの位置と波のタイミングが合えば波をキャッチできる。逆に筋力が高くても、ポジションが合っていなければキャッチできない。これが証拠だ。パドリングは「力でキャッチする」ものではなく「波に合わせる」動作だ。詳しくはテイクオフの3原則で解説している。
肩・肘を壊す「危険なフォーム」

日本のサーフィン指導書・動画でよく見かける以下のアドバイスは、40代以降の週末サーファーには特に危険だ。
| よく言われること | 身体への影響 |
|---|---|
| 親指から水に入れる | 肩関節の内旋を強制 → 棘上筋・腱板への負荷増大 |
| 肘を高く上げる(ハイエルボー) | 肩峰下インピンジメントのリスク上昇 |
| 腕を伸ばして漕ぐ | 肩・肘・手首に過度なテンションがかかる |
| 回転数を上げながら頑張る | 体幹との協調が崩れ特定部位に過負荷 |
私自身、これらを実践していた時期に肩の亜脱臼を繰り返した。アゴをボードにつけたまま肘を上げ、力いっぱい漕いで波に乗ろうとしたとき、肩が抜けた。フォームを変えてから亜脱臼はほぼゼロになった。
コレクトサーフが推奨する4つの原則

原則1:小指から入水する
手を水に入れるとき、親指側ではなく小指側から入れる。これだけで肩関節の内旋が起きなくなり、自然な可動域の中で水をキャッチできる。最初は違和感があるが、1週間も続けると自然になる。
原則2:肘で引く
腕全体ではなく「肘を支点に、前腕で水を後ろに流す」イメージ。腕を伸ばして漕ぐと肩・肘・手首すべてに負荷がかかるが、肘主体にすると肩関節への集中負荷を回避できる。
原則3:アゴをボードから離す
アゴをボードにつけたまま漕ぐと肩が詰まりやすくなる。顔を上げることで肩が自然に開き、可動域が確保される。これはポップアップの陸トレでも共通の最重要チェックポイントだ。
原則4:力まない
力みは余分な関節負荷を生み出すだけで推進力にならない。「水を感じながら後ろに流す」感覚で漕ぐ。リラックスして全身の協調が保たれることで、各関節への負荷が分散する。
バイオメカニクスで見る入水角度の違い


| 動作 | 肩関節への影響 |
|---|---|
| 親指から入水 | 肩の内旋を強制 → 棘上筋・腱板に負荷 |
| 小指から入水 | 自然な外旋位 → 負荷が分散 |
| 肘を高く上げる | 肩峰下インピンジメントリスク上昇 |
| 肘で引く動作 | 肘・前腕主体 → 肩関節への集中負荷を回避 |
40代・週末サーファーへ特に伝えたいこと

40代以降は回復力・柔軟性・関節の耐久性が20代とは根本的に異なる。慢性障害(腱板損傷・肘の腱炎・頸椎の問題)が出やすい年代でもある。
私が20代のころに無理をして積み上げた負荷が、40代に入って慢性症状として出てきた。「頑張るパドリング」から「関節を守るパドリング」へ切り替えることで、週末のサーフィンを続けられる身体を維持できる。サーフィンは一生続けるスポーツだ。10年後も海に入れる身体を今から作ることの方が、1本多く波に乗ることよりはるかに大切だ。
よくある質問
まとめ:パドリング フォーム チェックリスト
- 小指側から入水しているか(親指から入れていないか)
- 肘を支点に前腕で水を引いているか(腕全体で漕いでいないか)
- アゴがボードから離れているか
- 余計な力みがないか(肩・首がリラックスしているか)
パドリングフォームが改善されると、テイクオフの成功率も自然と上がる。ボードのボリューム(浮力)が自分に合っていることも、楽に波をキャッチできる重要な条件だ。サーフボード 適正ボリューム診断&早見表【年代・体重・レベル別】
