この記事はサーフィンのパドリングのコツについてまとめています。
ネットで見かけるハウツーパドリングは「競技サーフィンが目的」が多いです。
競技を目指してるヒトはそれでもいいと思いますが、9割のサーファーは趣味で楽しんでいます。
なので目的がズレていないかなと思って、32,000人のサーファーさんにアンケートしてみました。
本記事はその点を踏まえて
サーフィン初心者〜中級者のサーファーが怪我なく、サーフィンを楽しめるように「疲れないパドリング」のやり方を科学的メソッドを用いて解説していきます。
目次
知らないと損する「疲れないパドリング」とは?
私は16歳から35歳まで、競技選手のパドリングこそが正しいと思い込んでいました。
競技選手のパドリングは「試合に勝つための速さ」を重視しています。
パフォーマンスボードを使い、身体能力を最大限に使います。
真剣な勝負の世界で使われているパドリングを、一般サーファーの身体能力で真似をするとどうなるか?
怪我します。
そして、サーフィンを楽しめなくなります。
もうサーフィンを辞めようかなと思っていた頃に、オーストラリア発の科学的メソッドである「疲れないパドリング」と出会いました。
そこで分かったのが・・・
19年間実践してきたのは「目的がズレているパドリング」だったんです。
その経験を、同じ悩みを抱えている一般サーファーに伝えたくて、記事にしています。
パドリング 悩み【一般サーファー32,000人のアンケート】
- すぐに疲れる
- 進まない
- 肩や肘の痛み
インスタグラム32,000人フォロワーのサーフィンアカウントでアンケートに答えてもらいました。
一般サーファーが抱える悩みのベスト3は「疲れる、進まない、カラダの痛み」でした。
パドリング 知りたいこと【一般サーファー32,000人のアンケート】
- 疲れない方法
- 力まない方法
- 波をキャッチする方法
悩みとは別に「知りたいこと」についてもアンケートに答えてもらいました。
みんなが知りたいことは「速いパドリング」ではなくて、「疲れない方法、力まない方法、波をキャッチする方法」でした。
速いパドリングは求められていなかった【事実】
32,000人のフォロワーさんに聞いてみた事実です。
速さではなく
波をキャッチする方法や、アウトに出る方法が知りたいという声が多かったです。
9割のヒトがパドリングを勘違いしていて、自分の力だけでパドリングをしようとしている感じでしたね。
サーフィンのパドリング よくある失敗例
- 腕が疲れる
- 1時間で腕が上がらなくなる
- クロールしている
- 首と腰が痛む
- 肩が痛む
- 肘が痛む
- パドリングはパワーだと考えていた
上記のどれか一つでも当てはまっているなら、それはパドリングのやり方が間違っているからかもしれません。
サーフィン 正しいパドリングの口コミ
- ボードが左右上下にブレなくなった
- 4時間パドルしても疲れなくなった
- 前に進めるようになった
- 肘が痛くなくなった
- 肩が痛くなくなった
- 腕を使っていないから疲れなくなった
- 肩甲骨付近が筋肉痛になる
これらは、コレクティブサーフィンフィットネスの会員さんが、正しいパドリングを実践して得られた効果の一部です。筆者だけではなく多くの方が同じような成功体験を手に入れています。
正しいパドリングとは?
まず先に正しいパドリングについてまとめていきます。正しいパドリングとは以下の要件を満たしているパドリングです。
- カラダの仕組みを使っている
- ボードの力を使っている
- 海の力を使っている
です。でもこれだけじゃイメージできないですよね。もう少し具体的に分かりやすくすると以下になります。
- 怪我をしない、疲れない
- サーフボードが上下左右にブレずに前に進める
- 海の流れ、波の力をもらう
この3つの要件を満たしていることが、正しいパドリングの要件になります。
例えば私は肘で引くパドリングを実践していますが、あくまでもそれは「テクニック」の話で、根幹ではないんですね。
漕ぎ方のメソッドは人それぞれで信じることが違うので、どれを選んでもいいんです。
大事なことはカラダの仕組み、ボードの力、海の力を効率よく使うこと。それが出来ているならどんなパドリングでも良いんです。
という前提があって、その3つの要件を満たす方法を以下にまとめているので、ぜひ読み進めてみてください。
疲れないパドリングとは?
【疲れないパドリング】とは Corrective Surf’n’ Fitness で推奨されているパドリング方法です。
カラダの仕組みでパドリングするので疲れにくく、肘や肩を痛めることもなくなります。
筆者は19年間、腕の力でパドリングしていたので、肘や肩に慢性的な痛みを抱えていました。
カラダの仕組みでパドリングする方法を学んでからは、嘘のように肘や肩の痛みがなくなりました。
だからこそ、疲れないパドリングは多くのサーファーに知ってもらいたいテクニックです。
疲れないパドリングのやり方【1分の練習動画】
- 足を閉じて、お尻を締める
- アゴを上げて、肩甲骨を寄せる
- 小指から水面に落として、肘で引く
サーフィンの正しいパドリングは、海の力、カラダの仕組み、マインドセット、道具の力を使います。ただ、一つ一つを説明すると、すごく長くなってしまいますので、ザックリまとめると上記の3項目になります。
この3項目には、科学的メソッドが詰まっていて、それを意識して練習することで普段のサーフィンでも無意識で出来るようになります。
クロールとパドリングの違い
サーフィンのパドリングでは【水泳のクロール】を応用する方も多いです。特に水泳を学んでた方はクロール気味にパドリングすることが多いです。
例えば、水泳にもクロールや平泳ぎなど、色々な泳法があります。
サーフィンのパドリングもその一種だと考えてもらうと分かりやすいです。
クロールは回転運動、パドリングはサーフボードの上に乗ってからの平衡運動になるので、そもそも道具や泳ぎ方が違います。
前に進むという目的は同じですが、道具と泳法がそれぞれで違うってことを意識するといいでしょう。
クロールの特徴
- 回転運動
- 背骨を使う
- 親指を意識する漕ぎ方
クロールの特徴は、背骨を中心にカラダを回転させて泳ぐ方法です。カラダの軸を右、左と交互に入れ替えて行うので、手の動きは自然と親指から水面に入れることになります。
パドリングの特徴
- 平衡運動
- 背中を使う
- 小指を意識する漕ぎ方
パドリングの特徴は、サーフボードの真ん中に乗り、軸を固定して泳ぐ方法です。カラダの軸を真ん中に固定した上で、水を漕ぐ動きなので、小指から水面に入れる方がカラダの仕組み上、無理がありません。
考え方としては、歩く動作と同じです。親指から下に落とすと歩きにくいですが、小指から下に落とすと歩きやすくなります。
パドリングで腕が疲れる理由
- 腕を伸ばしている
- 漕ぐ場所が違っている
- 腕や手に力が入っている
パドリングで入水から最後まで力を入れて漕げと教わったことはありますか?
私はそう教わりました。最初の方から最後までちゃんと水を掴んで漕ぐことが正解だと思っていました。
しかし、それは間違いです。
水の流れを作るときに、入水時は下方向にしか漕げません。それでは下方向に力が向いてしまうので、サーフボードを前に進める力にはなりません。
最後の方は上方向にしか漕げません。
なので、正しくは入水と水から出るときには力を抜いて、サーフボードと水平に漕げる部分だけ濃げばOKということです。
また肘の痛みは、肘を伸ばしてパドリングすると、肘の関節が炎症を起こしてしまうことが原因です。これをテニスではテニス肘、ゴルフではゴルフ肘と呼んだりしています。
パドリングで腕が疲れるのは、腕の小さな筋肉でパドリングしているため、乳酸が溜まりやすくなるからです。
正しいパドリングが疲れない理由
- 腕を伸ばさない
- 漕ぐべき場所で漕いでいる
- 腕や手の平は脱力している
腕を伸ばさないことによって、肘を痛めないで済みます。また漕ぐべき場所で漕ぐだけなので余計な力も必要ありません。
腕や手のひらは脱力できているため、より効率的にパドリングができるようになります。手のひらに力を入れると逆に遅くなります。
サーフィンのパドリングで小指と薬指を意識する理由
- カラダの仕組みである
- 親指を捻ると腕が動く
- 薬指と小指を捻ると背中が動く
- 親指を前に出すと手のひらが硬直して開く
- 小指を前に出すとリラックスして手が閉じる
- 薬指は骨が繋がっている
- 小指は一番パワーがある(力士は小指でまわしを掴む)
パドリングで足を閉じる3つの理由
- 軸がブレるのを防ぐため
- 肩甲骨を寄せて胸を開きやすくする
- アゴをボードから離すため
パドリングで足を閉じるのは、サーフボードをなるべく進みやすくするためです。
パドリングで初心者さんがやりがちなのが、足を広げてバランスを取ろうとすること。
足を広げると胸とアゴの位置がサーフボードに近くなり、サーフボードの前側の抵抗が強くなります。
そして、軸が真ん中に定まっていないので、パドリングをしようとすると軸が左右にブレて、さらに大きな抵抗をサーフボードが受けることになります。
両手と両足を前に歩こうとしても、左右に重心が動いて歩きにくいように、サーフボードの上でも同じことが起きてしまいます。
なので、なるべく足を閉じて軸を真ん中に定める意識を持ってパドリングするのがオススメです。
お尻を締める3つの理由
- お尻が締まってないと背筋で反って硬くなる
- サーフボードの前の抵抗を減らす
- サーフボードの後ろの抵抗を増やしたい
パドリング中にお尻をキュッと締めると、サーフボードの前の方の抵抗を少なくし、テール側の抵抗を増やせるようになります。
簡単に言うと【波のパワーをサーフボードがキャッチしやすい状態】になるってことですね。
お尻が締まっていないと、背筋で胸を反って、アゴを上げようとするので、体全体が硬直してしまいます。
逆に、足を閉じてお尻を締めると、カラダの仕組みを使って胸を開くことができ、アゴも自然に上がります。
試しに立った状態で試してみましょう。
両足を組んで真っ直ぐ立ち、お尻をキュッと締めると、背中の肩甲骨が寄りますよね。その時、自分の胸が自然に開いてて、アゴも上がっているはずです。
そうすることでサーフボードの軸を安定させることができて、重心もテール側に残すことができるので、サーフボードが波をキャッチしやすくなります。
アゴをボードから離す3つの理由
- パドリングのスペースが欲しい
- 周辺視野を広くしたい
- 脱力ができるようにしたい
パドリングでアゴをボードから離す理由は、パドリングのスペースを作ること、視野を広くすること、体全体を脱力することが目的です。
筆者はアゴを上げることができなくて、十年以上も肩の脱臼癖に悩まされてきました。
要因はスペースのない姿勢でパドリングをして、肩から回してたこと。
下を見ながらパドリングをしていたため首よりも後ろに腕を回そうとしてたこと。
スペースもない、下を見ているためカラダが硬直していたこと。
これらが組み合わさって、パドリングすると肩がズレるという悩みを十年以上抱えてきました。
10年以上も肩の痛みに悩まされてきましたが、正しいパドリングを身につけてからは一度も肩がズレることがなくなりました。
整骨院や整体に通っても治らなかったのに。
なのでパドリングをする時は必ずアゴを上げるようにしてください。ただ、カラダの仕組みを使って無理なく上げることが大事です。
テイクオフのパドリングのコツ
- テール側に重心を移動する
- 深く漕ぐ(腕は伸ばさない)
- 波をよく見る
次章でも解説しますが、基本的にはパドリングのやり方は同じで考えるといいでしょう。
テール側に重心を移動するのは、私も浮力の大きなボードでサーフィンするときに意識して使っています。
例えば通常の沖に出るパドリングでは、サーフボードの真ん中あたりに重心を意識してカラダの位置を置くようにしています。
でも波に乗る時は、それだとノーズ側の抵抗を受けて刺さっちゃうので、テイクオフの時はカラダの位置を後ろにズラして重心を後ろにするようにしています。
そして、大事なポイントですがテイクオフ時のパドリングは慌てたり、急いだり、速く漕ごうとしてはいけません。
筆者もよくダブルパドルやバタ足などやってしまいますが、あれは逆効果になります。
特に【最後のひと掻き】が足りないとよく言われたりしますが、最後のひと掻きで乗れる、乗れないが決まってる時点で失敗しています。
パドリングは回転数を速くするのではなくて、腕を深く入れて肘で引くだけでOK。もちろんその時アゴを下げてはいけません。
サーフィンの正しいパドリングを3つに要約すると?
- 足を閉じてお尻を締める
- 肩甲骨を寄せてアゴを上げる
- 小指から落として肘で引く
サーフィンの正しいパドリングをカンタンにまとめると、【足を閉じてお尻を締める】、【肩甲骨を寄せてアゴを上げる】、【小指から落として肘で引く】の3つになります。
この3つの動きの中に、科学的メソッドが詰まっているので、あれこれ考えずに練習しながら実践していきましょう。
補足 パドリングでなぜ小指を下にしないといけないのか
なぜ小指を下にしないといけないのか。
ここからはもっと詳しく【小指を下にする理由】を知りたい方に向けてまとめています。
カラダの仕組み【親指、人差し指、中指でグーパーする】
親指、人差し指、中指は器用に動かすことができる指です。
ひねったり、よじったりすると、上腕部分の筋肉が連動していることが分かります。
例えば、カビキラーのスプレーボトルを使ったことがある人は分かると思いますが、あれって数回プッシュしただけで上腕に乳酸が溜まって疲れませんか?
親指で掴んで、人差し指と中指でプッシュするとすぐに疲れます。でも実は薬指と小指でプッシュするようにすると全然疲れないんですよ。
パドリングも実は全く同じなんです。
カラダの仕組み【薬指と小指でグーパーする】
前述しましたが、薬指と小指をグーパーしても疲れません。なぜなら薬指は骨を使っていて、小指は背中の筋肉を使っているから。
カラダの部位の中でも背中の筋肉は特に大きいです。
こうした大きな筋肉で動かす指なので、パワーもあり疲れにくくなります。その分、親指や人差し指と比べて器用さはありません。
パドリングで疲れないというのは、骨と背中の大きな筋肉を使っているから疲れないというカラダの仕組みなんですね。
肩や肘に慢性的な痛みを抱えている人にも効果的なパドリング方法なので、ぜひ実践してみてください。
カラダの仕組み【親指を前に出すと手が硬直して開く】
パドリングは脱力が大事です。よくあるハウツー本や動画には、手のひらを少し開いて、水の中でS字を描くようにパドリングすると教えられていますが、それを19年間実践してきた身としては、完全に間違った知識だと言えます。
まず手のひらを少し開くためには、親指を前に出さないと手は開きません。
そして、手を開くことを意識すると、自然に手の平と腕に力が入ってしまい、さらにS字を描くという意識もあるから余計に力で漕ごうとしています。
これ、どういうことかというと、熊手で水を掻こうとしているんですよね。熊手のしかも先の方で漕ぐ意識なものだから、全然効率が悪いパドリングをしていることになります。
カラダの仕組み【小指を前に出すと手がリラックした状態で閉じる】
脱力をするためには小指を前に出すと、手のひらはリラックスした状態で自然に閉じるようにできています。
例えばドアの取っ手を掴んで開ける時、親指を前に出して開けることはしません。小指を前に出して肘で引いたり、押したりしていませんか?
あの状態が最も手を閉じやすく、掴みやすいから、自然とカラダが動くようになっています。
パドリングの手はSUPのパドルと同じです。手を少し閉じた状態の方が水をよく掴めるし、パドルの柄の部分を使うことで水を漕ぐ面積を増やすことができます。
腕の深さでスピードを変えるのも、同じような理屈です。
手のひらをSUPパドルの先の部分をイメージする、腕をパドルの柄の部分をイメージすると分かりやすいです。
水面でS字を描くというのは、脱力していれば手のひらが自然に内転してくれます。でも力が入っていると内転しません。
これもSUPのパドルと同じ原理ですね。
リラックスして水を掴めるように、小指を意識していきましょう。
カラダの仕組み【歩くときも小指が下にくる】
シンプルに考えましょう。
あなたが歩く時、走る時、小指はどこにありますか?
小指から落として歩いていませんか?
それとも間違ったパドリングのように親指から落として歩いていますか?
人間の身体能力は素晴らしいです。一番疲れない動かし方を知っています。
でもあえて疲れる動かし方を選ぶこともできます。あなたはどっちですか?
子どもと砂遊びするときは無意識で小指を下にして砂を集める
カラダの使い方の多くは、子どもと遊んでいると気付くことができます。
海で砂遊びをするときに、どうやって砂を集めているか意識して見てみてください。
熊手を使うこともありますし、スコップを使うこともあります。
その時の子どもたちの親指や小指を観察すると、よく分かります。
効率よく砂をかき集めるには、小指を前に出して肘で引いてます。また小指を下にして手を軽く閉じることを無意識でやっています。
海の水を漕ぐときも同じです。
子どもたちの体の動きから学ぶことは本当に多いです。